はがき句評     十一月号


 漁師妻ぶっきら棒に蟹買えと

 海に遠く暮らしていると海を恋う本能は誰
でも持っている。特に旅行なんかで、海に親
しむ機会に恵まれれば、それほど幸福なこと
はない。この句も何かのきっかけで出来た句
だと思う。「ぶっきら棒に蟹買えと」が調子
もおもしろいと思うし、句全体からかもしだ
すユーモアも二十年間も句作にネバリ続けて
きた木童(まだ木童)氏には構成が自然にで
きてしまうのだろう。風 量もしっかりして
いる句だ。
(小田桐耕雲)


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 ぶっきら棒の言外に、この蟹うまいぞよと

、言うことが隠れている。またみちのくの人
の素朴な姿も伏せられている。 外が浜とも
北浜ともその風景さえ浮かぶ。俳諧のあわれ
さのある佳汁。ぶっきら棒とは言い得て妙な
り。
 (鎌田露山)

        昭和二十八年

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