句評 三良 水引いて重なりあえる落林檎 落林檎盛り集めたる畑かな 両句とも先日の台風の林檎の大被害をのべ た句である。 青森県だけで林檎の被害は六十数億というこ とを聞いた。このような、あるいは再起不能 であるかも知れない大被害を前に、なんの気 張ることもなく、憤ることもなく坦々と叙し てあるのが、いえようもなく心を打つ。 「水引いて」に万感の思いがある。「重なり あえて」も動かぬところである。やりきれな い百姓の気持ちがこれらの言葉に現されてい るように思う。まことに同情に堪えない。
後の句、この林檎を盛り集めた畑を見ている 百姓の気持ちは全く気の毒というほかない。 このような落林檎の山がいくつも出来るので ある。税金ばかり取らず早く為政者もなんと か処置してほしいものと思う。 昭和四十年