句評 三良 炉話に松皮餅のことなどを これは浩洋居での旧正月句会の時の句であ った。私も殆どこれと同じような句を作った ことを思い出す。 浩洋居の大きな炉を囲みながら句会の始ま る前、いろいろな昔話をしていたのであった が、浩洋氏から松皮餅のことを聞いたのであ る。 松皮餅などと言うと何か近頃はやりの土産 ものの餅で、松の皮の模様でもしているかの ように想像されるのであるが、聞いてみると たいへんな餅なのである。これはこの地方の 飢饉の際の食料であるという。飢饉の時は、
食べられる山草はことごとく食料にするので あるが、松の皮まで食べるのかと驚いた次第 である。松の固い皮の内側の薄皮を集めて餅 のようにするのだそうである。どんな味がす るのであろうか。そんな話を聞きながら津軽 の祖先がなめた苦しい生活を思い浮かべたの であった。 松皮などという風雅な名の裏には、想像も できないような生活があったのである。そし て松皮餅の名もその裏にあった事柄もやがて 消えてゆくのだろう。 昭和四十一年