選評  手古奈


 鷽をよぶ口笛という口笛を

 うそは桜の蕾がようやくふくらんだ頃にさ
かんに来る、きれいな鳥である。眺めるには
よい鳥で俳人には喜ばれるが、桜には困る鳥
である。ことに、染井吉野には一度に何十羽
もやってきて蕾を食い荒らす。庭の桜をつい
ばみにもよく来る。
 口笛を「フォー」と吹くと答える。うその
鳴き声が口笛に似ているのか、口笛がうその
鳴き声にそっくりなのか、この口笛を吹くの
が実にうまい人がいる。その口笛を吹くとい
うのである。調子のよいうまい句である。
        昭和四十四年

戻る ( 句 評 ) 次の文へ