殆ど陽の通らない濃い緑の下の池の、歯朶
の茂みからほとばしる岩清水が静寂を破って
響き、真上の池には緋鯉のみが二三十尾、女
王に侍女が侍るが如く静かに遊泳して居て、
この水鏡に木洩日が明暗模様を投影して誠に
美しい眺めであり、水口には清水が湧いて岩
魚棲んでいる。やがて大小の配石の間を縫う
て幾曲り、すずこ竹の涼しい径を登り尽きる
処に浜砂の広場があり竹林の中に入るとまこ
とに涼しい。更に石灯籠の横から折れて又登
ると、此処は松竹山萩が自生している高い展
望台なっていて、自然の平石をベンチに配置
してあり座っていると冷えた感触が爽やかで
あり昼の虫も啼く静けさであった。遙かにス
キー場のリフトの鉄線が青い山腹に一線を曳
いて見える。目を転ずると岩木山の遠景など
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