自句自解


 大ねぶた大ゆさぶりて小屋を出る

 この場合のねぶたは、私の十四歳の頃に自
分が参加した懐かしさを句にしたものです。
あの頃は屋台に二本の丸太棒を通し、それを
力持ちの子供が二人で担ぎ、時には二里も三
里も向こうの村まで運行したものです。
 夕方になり先に太鼓方が太鼓を打ち鳴らす
と、早い夕飯もそこそこにして小屋の前に集
合し、やがてリーダーの指示によって小ねぶ
たを出し、あとの大ねぶたはなかなか重いの
で、前のめりになったり横ふりしたりして描
かれている武士が揺さぶるように身を振るわ
すように見えるのです。破れはせぬかとはら

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はらしたものです。付け加えますが、小ねぶ

たは喧嘩ねぶたで、石合戦て他と戦うときに
は大きい方のねぶたを大事に囲み、走りやす
い小さい方で喧嘩に挑むわけです。よくやっ
たものです。
 十年毎に戦争のあった明治、大正生まれの
少年の気風とでもいいましょうか。

        昭和四十五年

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